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降雨によるエコーの減衰についての調査
(Mirror Imageを用いて)(Ji Liさんの結果)

PRは能動的にマイクロ波を発し降水からの後方散乱を観測することにより降水を 検出します。PRが直下方向に放射したマイクロ波は、海洋表面で反射され、降雨 に当たり散乱され、再び海洋表面に戻ります。そしてそこでさらに反射され、ア ンテナに戻ります。すると、海洋表面下に鏡像降雨システムMIが現れます (Meneghini et al. 1983)。このMIを降雨イメージと比べることにより、PRと海 洋表面との間の4パス分の積分降雨減衰量PIAを知ることができます (Meneghini & Atlas 1986, Meneghini & Nakamura 1988)。

1998年6月に観測されたバージョン4のPR-レベル1(1C21)とレベル2(2A25)の海洋 上の降雨データを使いました。計算する際、海表面からの直接反射成分のた めPRは高度500m以下では降雨強度を検出できないため、降雨強度は表面から高度1000mまで変 化しないと仮定しています。またMeneghini & Atlas (1986)のMIのレーダ反射因 子とPIAの関係を表す近似式を使っています。

TRMMで観測されたMIの特徴について調べた結果のまとめ
以下は、Li & Nakamura(2002)のアブストラクトの訳の一部です。

1) レーダは、海洋上でMIを明瞭に検出できる。
2) MIのエコーは、衛星直下、または、ほぼ直下の入射角の場合、ダイレクトの 降水エコーにほぼ応答する。
3) 弱い降水強度の場合、レーダのノイズレベルに近い場合を除くと、 MIのエコー強度はダイレクトのエコー強度にほぼ比例する。
4) 強い降水強度の場合、降雨減衰効果が明らかに現れる。
5) MIのエコー強度とダイレクトのエコー強度の比 (MI/Direct)は、 降雨減衰によって影響を受ける。その影響は、フライトバンド高度と表面からのター ゲット降雨強度によって変化する。

さらに、これらの特徴を確かめるために、 信号の変動、ノイズの寄与、降雨減衰、表面断面積を考慮して、シミュレーショ ンを行いました。その結果、観測結果を説明することができました。

Li & Nakamura (2002)の全文は http://ams.allenpress.com/amsonline/?request=get-archive&issn=1520-0426&volume=019 からダウロードできます。


参考文献
Meneghini, R. and K. Nakamura, Proc. Intl. Symp. Tropical rainfall measurements., 235, 1988.
Meneghini, R. and D. Atlas, J. Atmos. Oceanic Technol., 3, 400-413, 1986.
Meneghini, R., J. Eckerman and D. Atlas, IEEE-Trans. Geosci. Remote Sensing., GE-21, 34-43, 1983.
Li, J. and K. Nakamura, J. Atmos. Oceanic Technol., 19, 145-158, 2002. "Characteristics of the Mirror Image of Precipitation Observed by the TRMM Precipitation Radar"