要旨

遠藤 洋和

本研究では、熱帯降雨観測衛星(Tropical Rainfall Measuring Mission: TRMM)搭載の降雨レーダと可視赤外線放射計から得られる降水および雲活動の特徴、そして両者の対応関係について調べた。
東南アジア地域(夏季)の雲・降水活動は、陸域では午後(12-18LT)からよる(18-24LT)にかけて活発となりm午前(06-12LT)では非常に弱まっていた。沿岸域では午後(12-18LT)に雲・降水活動が弱まることが確認された。総観的に、陸上の平均降雨頂は海上に比べて高かったが、インドシナ半島の東の海上およびインド亜大陸の東海上では、海域にもかかわらず平均降雨頂が非常に高いという特徴を示した。それに伴い、インドシナ半島を挟んで西側のアンダマン海と東側の東シナ海では、雨の降り方の様相が、多くの点で異なっていた。アンダマン海は常に雲が立ちやすく、背の低い雲からの弱い雨が中心であった。一方、南シナ海は雲が立ちにくいが、立つときは午前をピークとして背の高い雲が立ち、それに伴い強い降雨が見られた。
次に熱帯域を中心に冷雲量(輝度温度235K以下の雲の雲量)と降雨量の関係について、緯度経度1°グリッドで比較した。陸から離れた海域を中心として、冷雲量と降雨量の間に強い相関が見られ(決定係数0.7〜0.9)、両者の関係は線形に近かった。また地域により冷雲量と降雨量の関係は大きく変化したが、線形関係は保たれる、という特徴が認められた。冷雲量に対する降雨量の比が大きい地域は、インドネシア周辺/中央太平洋/南米北部から大西洋/東太平洋から中米/アフリカ大陸中部であった。さらに、冷雲量・降雨量関係の地域変化をもたらす要因についての検証を行った。その結果、冷雲量の中で巻雲が占める割合と、輝度温度235K以上の雲からもたらされる降水の割合が、冷雲量・降雨量関係に対して大きな影響を与えることが分かった。


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