要旨

長谷部 一成

1997年に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM: Tropical Rainfall Measurinf Mission)搭載の降雨レーダにより地表付近のレーダ反射因子と降雨高度の関係を調べた。南緯37°〜北緯37°、西経180°〜東経180°の範囲において10°×10°の間隔で散布図を作成しその特徴を解析した。全体的には地表付近のレーダ反射因子が大きくなるにつれ降雨高度も高くなる結果が得られた。データが分布している領域の右下方向にデータの見られる領域とない領域との間にかなり明瞭な境界が現れると言う特徴が示され、降雨高度がある高さに達しなければ地表付近においてある程度の強さの降雨は現れないと言う結果になった。また、境界線の傾きの地域性、季節変化特性を調べた。またconvective、stratiform、地表付近のレーダ反射因子と降雨高度を平均した場合のそれぞれについて同じ操作を行った。その結果、1) 境界線の傾きは冬半球よりも夏半球の方が大きくなる、2) stratiformよりもconvectiveのほうが地表付近のレーダ反射因子が大きくなるにつれて降雨高度が高くなるという傾向が強い、3) 衛星移動方向に長い降雨域の方が短い降雨域よりも全体的に降雨高度が高くなると言う結果が得られた。
降雨域の形状の解析も行った。北半球において降雨域は主に北東〜南西方向の方向性が、南半球では北西〜南東方向の方向性があることが分かった。低緯度の地域では明瞭な方向性が認められない結果になった。個々の降雨域の形状は似ているが中緯度域のほうが低緯度域よりも若干長くなる傾向も認められた。


back
N_lab Home