変化する地球環境を正確に診断するためには様々な研究手法を用いて現象を解明していく必要があります。私が学生だった頃、地球科学の研究には3つの視点が必要であると教えられました。それが“鳥の目、虫の目、化石の目”です。現在の手法に置き換えれば、さしずめ“衛星観測、現地観測、同位体による年代測定”と言ったところでしょうか。虫の目も、化石の目も言うまでもなく重要な要素ですが、その中でこの研究室では“鳥の目”に焦点をあてます。
人類は偉大なる鳥の目すなわち人工衛星を開発し、変わりゆく地球環境を宇宙から見るツールを作りました。数値計算によって得られた計算機の中の現象は現在我々が知りうる知見から得られる結果でしかありません。一方、衛星による“鳥の目”は、限りなく“事実”を計測しています。そこで、衛星が観測したデータを真摯に注意深く解析することにより、地球の真の姿(物理現象)を明らかにすることができます。そこが衛星研究の醍醐味であるといえるでしょう。
具体的には、
人工衛星は、地上での観測が不可能な熱帯地域や海上などを含む地球全体での降水の実態を把握することを可能にしてくれました。また、宇宙から可視光や赤外線の計測機器によって観測したのでは、雲の下に隠されてしまっている雨滴が、マイクロ波を使うことにより直接観測できるようになりました。これにより正確な降雨量分布の把握が可能となり、気象研究上の発展と気象予報に於ける精度の向上などに役立ちます。我々はこの最先端の衛星計測データを用いて、地球の、特に水循環に関わる要素の実態を把握すべく研究を続けています。