要旨
広瀬 正史
1997年に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM: Tropical Tainfall Measuring
Mission) 搭載.の降雨レーダにとりアジア域の降雨の鉛直構造について解析を行った。アジア域を緯経度5度の領域に分けて月平均した降雨プロファイルのデータセットを作成した。これらのでーたセットから、降雨構造は地形に関連した降雨頂分布に対応しており、低い高度で降雨量が増加あるいは減少するものに分かれた。浅い降雨の多寡により、前者は地面付近で降雨の鉛直分布の裾が広がり、後者は丸みを帯びるという特徴を示した。この特徴は対流性降雨のインパクトが強く、背の高い対流性の降雨の多い5月のインドシナ半島やインド亜大陸で顕著であった。海洋上では大気境界層に阻まれたせの低い降雨が多く見られた。 本研究では降雨の分布を熱源に注目して解釈する試みも行った。TRMM搭載レーダが瞬時的に測る雨から潜熱放出による大気加熱量を推定し、対応する同期観測データやモデルから計算した熱源分布と比較した。ここでは1999年の梅雨期に南西諸島で行われたTRMM検証観測実験時のゾンデデータと、領域モデルの出力値を比較データとした。さらに統計的に熱源分布を求めるため、気象庁全球客観解析データを用いて、一月分を緯経度5度の領域で平均化することにより個々の非断熱過程に伴う温度の変化た加湿の分布の特徴を調べ、同じ領域を同じ期間に渡って処理したTRMMによる降雨と比較した。 熱源分布と降雨活動とは有る程度対応していたが、対象とする降雨イベントや処理方法の個々の特徴が強く現れ、TRMMの簡略に見積もった熱源とゾンデや領域モデルによるものとはあまり良い定量的一致を示さなかった。一方、統計的に扱った熱源分布は陸での高い降雨や海洋上の低い降雨による凝結熱放出の高度分布を示し、知られている気候特性に整合性のある結果を示した。 |