要旨
芝川 晃一
1997年に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM: Tropical Tainfall Measuring
Mission)が打ち上げられてから、これまでには直接見ることのできなかった広域にわたる降雨の鉛直構造が明らかにされてきた。TRMM
PRは直接雨を観測していること、地形に関係なく空間的に連続した同質の観測が可能であること、太陽非同期であるため地方時ごとの降雨を見ることができることなど、他の衛星にはない特徴を持ち、降雨の日周変化と地形の関係を見るのに適している。 そこでほん研究では、TRMMに搭載されている降雨レーダ(PR: Precipitation Radar)を用い、海洋大陸(Maritime continennt)と呼ばれるインドネシアからニューギニアを含む海域を中心に降雨の特性を調べた。解析はTRMM PRの1998年1月から1999年12月の2年間分のデータを用い、世界地図標高データ(GTOPO30)により面積で分類した海・島・陸について、それぞれでの2年平均降雨量・日周変化・降雨の鉛直構造を求めた。また標高別に分類した日周変化の鉛直構造も求めた。 結果から海洋大陸では海に比べて島での降雨量が多くなっていること、海では午前に大陸では午後に雨量が多いこと、島ではその面積ごとに異なるが早朝と午後の雨の両方が見られること、おおきな島ほど大陸に近い特徴を示すこと、内陸ほど降雨の最大になる時間帯が遅くなることがわかった。さらにこの領域の特性が特殊なものであるか世界的なものであるかを調べるために、解析領域を熱帯全域に広げた。結果から、他の領域でも内陸ほど降雨の最大となる時間帯が遅くなる傾向が見られた。これは海陸風の影響が考えられるが、一般に言われている海陸風のスケールに比べて大規模である。 さらに、海側でも降雨の日周変化は海岸から数百kmにわたって存在し、海岸線から離れるほど遅れること、海岸線では降雨の日周変化が大きいが海岸から陸地へ数百km内陸に入ると弱いながらも逆の日周変化が現れること等、いくつもの面白い示唆が得られている。 |