要旨

米田 恵美子

広範囲に渡る大気現象の観測に、能動的な観測が可能で、機動性に富む航空機搭載レーダが期待されている。今日まで航空機搭載気象用パルスドップラーレーダの観測例がいくつかあり、その測定精度が1m/s以内に要求されている。航空機搭載ドップラーレーダでは、プラットフォームである航空機が高速で移動し、常にその姿勢が揺らいでいるために多少なりとも誤差を生じることが過去の研究から述べられている。より正確に航空機搭載型のドップラーレーダの観測データを解析するために、これらの誤差要因に対して必要な補正を本研究で深化させていくことを目的とし、主に日本海の降雪観測データを用いて解析を行った。
ドップラーレーダに受信されるエコー強度については、航空機搭載レーダに特有の受信エコーパターンが認められた。また、データ解析で重要となる航空機高度を考えるため、海面エコー強度を参照した。また同時に走査角の中心位置の確認も行った。
一方ドップラー速度の算出では、機体の姿勢と飛行速度、アンテナ角度よりレーダアンテナ視線方向の3成分を計算し、アンテナ視線方向に加わる速度を考察した。ドップラー速度の折り返しを考えるために、ゾンデから風向・風速データを用いて折り返し速度のシミュレーションを行い、その結果をもとに折り返し補正を行った後、航空機の移動速度を除去し、目標体(降雪粒子)の速度を求めた。この目標体の速度を詳細に評価するために、参照物として海面での速度を抽出し、補正をおこなった。走査角をずらした対地速度の除去、航空機の飛行高度を変化させて的確な海面位置でのデータ抽出、ビーム幅やサイドローブの影響を考慮したところ、これらによる影響がみられなかった。最終的にはCAMPR自信のハードウエア的な欠陥と思われる誤差と分かり、dual-doppler解析に必要な精度は得られなかったが、予備的な解析として、ゾンデデータと比較した。海面での補正における誤差がなければ、より詳細な風の場が求まったと思われ、他のレーダとの比較も可能である。


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