北西太平洋域における冬季降水の特性
日本周辺域、特に日本海から太平洋にかけての地域は、冬季モンスーンに伴う多
降水帯としてよく知られる。この領域では、いわゆる冬型気圧配置の変化が降水
や雲分布の変化をもたらすが、降水システムの詳細、特に太平洋上のそれはよく
知られていない。
1999/2000-2003/2004年12-2月のTRMM衛星搭載PRとVIRSのデータを組み合わせる
ことにより、降水システムの鉛直・水平構造を調べた。降水パターンは形態お
よび位置により、低気圧および前線パターン(CF)、日本海,黄海,太平洋上
における寒気の吹き出しパターン(それぞれCO-J,CO-Y,CO-P)に分類し、そ
れぞれのパターンにおける特徴を調べた。COに共通した特徴として、エコー頂
高度は2km程度で背が低く、20dBZ程度の弱い降水が卓越する。雲頂高度は約4km
であった。CO-YとCO-Jに比べると、CO-Pはより大きなシステムに発達しやすく、
地上付近に融解層が現れやすい。CFは3kmおよび6km付近にエコー頂高度,雲頂
高度の最大頻度をとり、強度,水平スケールともにばらつきが大きいことがわ
かった。
また、寒気の吹き出し時に伴う降水は、殆どが海面からの水蒸気供給と海上風の
収束によって生じるが、日本海側と太平洋側で潜熱の寄与が異なっている。一
方、低気圧および前線周辺域の降水は、周辺領域からの吹き込みによる水蒸気
供給によって生じることが示された。
参考論文
山本宗尚くんの修士論文・博士論文